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100年に1度のチャンス -2 . はてなブックマーク  Twitter   2008-10-28

 このたびの世界的な金融危機に対して、その原因をつくったアメリカだけでなく、ヨーロッパの国々、あるいは日本においても、緊急対応策が次々と打ち出されています。さしあたっての応急手当てといったところです。リーマン・ブラザーズが経営破綻してからこの一ト月あまり、アメリカを始め、ヨーロッパ各国が打ち出した、金融機関への公的支援の額は、合わせて300兆円に達したと言われています。

 現在の私の関心事は、このような目前(めさき)の対応策ではありません。今回、全世界を巻き込んだ金融界の大混乱は、アングロサクソンが考えだした金融工学を騙しの道具として使ったインチキにその原因があり、しばらくはゴタゴタが続くものの、いずれ調整期間が終れば元に還る筋合いのものです。対応策の巧拙(こうせつ。巧みなこととまずいこと)によって、調整期間の長短はあるでしょうが、世界全体がひっくり返るほどのものではないでしょう。前回述べた通りです。

 アメリカのブッシュ政権は間もなく終了します。ブッシュの8年間の功罪について考えてみますと、功の方は何も思い浮かびませんが、アメリカが全世界を巻き込んで引き起こした迷惑千万なトラブルは2つあります。
 一つはイラク戦争、いま一つは、この金融危機です。数字の上から、この2つのトラブルを見たらどうなるのか考えてみましょう。
 まず、イラク戦争。これは、アメリカが偽りの大義名分(イラクが大量破壊兵器を持っているとした、事実に反する主張)を掲げて仕掛けた戦争(つまり身勝手なケンカということです)ですが、この戦争について、アメリカをはじめ、全世界の国々がいくらお金を使ったのか、つまりイラク戦争の費用については、一人の経済学者が試算しています(ジョセフ・E・スティグリッツ、『世界を不幸にするアメリカの戦争経済 イラク戦費3兆ドルの衝撃』徳間書店刊)。スティグリッツは、アメリカの経済学者の中では数少ない筋の通った学者で、しかも、会計学的な手法(会計工学)を経済学の中にしっかりと取り込んでいる点では括目すべき存在です。日本の多くの経済学者のように、借り物の経済学を振り回していい加減なことを喋っている口舌の徒ではないようです。
 スティグリッツによれば、イラク戦争で費消されたお金は、
そのうち、
つまり、イラクとかアフガニスタンのインフラストラクチャー(国土の社会生活基盤)を徹底的に破壊し、多くの人々を殺したり傷つけたりするのに、500兆円ものムダ使いをしたというのです。しかも、この中にはイラクとアフガニスタンが戦争によって被(こうむ)った損害は含まれていません。直接的なインフラの損害とか人的被害の他に、イラクとアフガニスタンとが戦争によって失った利益(機会費用)も損害と考えることができますので、これらを合わせると莫大なものとなるはずです。
 このうちの機会費用について補足しますと、この言葉はオポチュニティ・コストの訳語として一般に管理会計の分野で用いられているものです。私はかねてから、機会費用という訳語は不適切だと考えているのですが、未だに慣用的に用いられています。何回聞いたり、目にしたりしていてもよく分らない人が多いのではないでしょうか。これは皆さんのせいではありません。日本語として不適切で、誤っているのです。
 要するに、この場合の「機会費用」とは、
“イラク戦争がなければ、多くの富が生産されしかるべき国民所得が確保されたであろうことは疑いのないところですが、戦争のために富の生産ができず、国としての利益を得ることができなかった、つまりマイナスの利益が生じた訳で、このマイナスの利益、あるいは失った利益”
のことをいうのです。マイナスのコストは利益であるように、マイナスの利益はコストであるということです。

 次に、今回の金融危機。インチキ賭博の道具として用いられたのは怪しげな金融商品で、インチキがバレてしまったことから世界中が大騒ぎしています。金融工学を駆使してデッチあげられた金融商品は、相当以上に複雑なもので、現時点では、どの位の損失が含まれているのか明確に算定することは難しく、そのためでしょうか、100兆円とか200兆円とか、見込みの数字が飛び交っているようですが、とてもその程度ではおさまらないようです。
 私は、全世界にバラまかれた金融商品に含まれている損失は、
は下らないと考えています。
 つまり、2つのトラブルだけで合わせて、少なくとも
ものお金が、この8年間でどこかに消えていったことになります。単に消えていっただけではありません。今なお、これらのトラブルは続いており、それぞれに大きな爪跡を残しているのです。プレジデント・ブッシュのマイナスの置き土産といったところです。

 つまり、イラク戦争と金融危機をもたらした国際的な詐欺行為という、2つのドサクサに紛(まぎ)れて、合わせて1,000兆円ものお金が、不当に移転したということです。

【追記】

 コメントNo.1381のMr. ONO NATSUOへ。この“100年に1度のチャンス”を貴兄のコメントへの回答に替えます。Good Luck!

 ―― ―― ―― ―― ――

 ここで一句。
“変人が こわしていった 夢のあと” -鈴鹿、睡眠少。
(毎日新聞、平成20年10月19日号より)

(詭弁を弄しつづけた5年間の変人政治。あちらこちらでボロが発覚し、完全な制度疲労を露呈している官僚制度とインチキ宰相のもとでも、シッカリと生き続けてきた日本。日本と日本人の二枚腰のネバリ強さ、日本国は健全です。)

100年に1度のチャンス -2 (2008-10-28) . はてなブックマーク  Twitter  


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[1385] Re1: 100年に1度のチャンス -2 投稿者:山田 征晴 2008-11-04 02:50:49
永らく山根先生の当ブログを拝読させていただいております。この度初めてコメントさせて頂きます。

>私はかねてから、機会費用という訳語は不適切だと考えている<

Opportunity cost or economic opportunity loss is the value of the next best alternative foregone as the result of making a decision. (出自:Wikipedia)

経済機会消滅想定損失額 (山田訳)

大分長ったらし訳語ですがいくらか本来の意味に近ずけたのではないかと思うのですが如何でしょうか?
[1386] Re2: 100年に1度のチャンス -2 投稿者:山根治 2008-11-04 17:43:27
>[1385] 山田征晴 様

これだと意味がよく分かりますね。
もう少し短ければ(漢字で4~5字)更にいいのですが。

ちなみに、機会費用については、例えば、B/C分析(費用便益分析)に関して国土交通省が公表している「公共事業評価の費用便益分析に関する技術指針」(P.15)にはその定義として、
”ある選択肢を選択する際に、その他の対案の中で最も高い収益が得られる選択肢の収益”
とされているのですが、この定義を読んで一体何人の人が理解できるのでしょうか。
更には、定義に続いて「貨物の機会費用」は、
”貨物の輸送時間が短縮することにより、その短縮相当分だけ早く市場で取り引きされ、その収益を新たな投資に回すことができる、といった解釈に基づくものであり、貨物にかかる金融コスト(金利)から計測するのが一般的である。”
と、グダグダと怪しげな説明が加えられることによって、ますます混乱してしまいます。
この定義に限らず、「技術指針」とそれに基づいて作成された「算定マニュアル」は、10人余りの著名大学の教授の指導のもとで作成されたもので、机上の空論に類する部分が多いようです。会計学、とくに会計工学の専門家が全く関与していないからでしょうか。

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