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粉飾された2兆円 -11 . はてなブックマーク  Twitter   2008-07-01

 B/Cの値が全国で最大の値を示している、宮城県の
について、改めて考えてみることにしましょう。

 この河川改修事業では、
費用(C)が89億円に対して、便益(B-3)が1兆1,056億円
と計算されており、B/Cの値として124.7(124.2の誤植でしょうか)が示されています。
 この事業の年便益(B-2)を逆算してみますと、
となりますので、投入資金である89億円が、ナント一年以内どころか2ヶ月ほどで回収されてしまうことを意味しています。(514億円÷89億円=5.77回転、12ヶ月÷5.77回転=2.08ヶ月)

 一般の経済社会で投下資金が2ヶ月ほどで回収されるケースなどすぐには思いつくことができません。あるとすれば、ブラック・マーケット(闇の世界)でのトイチの高利貸し(10日で1割の暴利をむさぼる金貸しのことです)とか、ニセ札あるいは麻薬製造といったところでしょうか。いずれもレッキとした犯罪です。つまり、真っ当なショーバイではないということです。
 ましてや治水事業は公共事業です。河川改修事業が完成してから2ヶ月ほどの短い期間で工事費の全てが回収されるなど、およそ考えることさえできない想定の範囲をはるかに超えた全くの絵空事なのです。国交省の役人衆は、明らかに現実離れした数字が現われても全く意に介さない、なんともおおらかな性格のズ太い神経の持主なのでしょうね。
 役人だけではありません。事業計画をチェックする学識経験者と称する人達も同様です。ちなみに、斐伊川水系のB/Cが3.4であることにお墨付きを与えたのは、『中国地方整備局事業評価監視委員会』の10人のメンバーです。このうちの8人が、平成15年6月23日に審議したことになっているのですが、2兆円にも達する、現実にはありえない経済効果に対して誰一人として疑問を呈する人はいませんでした。

 これまで、国交省が公表しているB/Cの値は、経験則からみてありえない数字のオンパレードであることを示しました。斐伊川水系だけでなく、全国的に怪しげな数字が乱舞しているのです。

 次に、斐伊川水系の2兆円の便益(B-3)が論理的に矛盾することを示し、論理的にもありえないことを論証いたします。

 経験則に反することを論証するために導き出した命題(めいだい。一つの判断の内容を、整った言葉で表したもの、-新明解国語辞典)は、次の2つでした。
 一つは、
『斐伊川水系では毎年必ず961億円以上の水害が発生する。』(“粉飾された2兆円-8”)
という命題であり、
 二つは、
『斐伊川水系においては過去140年の間に起った最大の洪水による被害額は、最近の物価水準でいえば、300億円である。』(“粉飾された2兆円-9”)
という命題です。

 第一の命題は、国交省が公表している2兆658億円という総便益(B-3)から必然的に導き出されたものですし、第二の命題は、明治以来の水害統計から導き出された経験則でした。第一の命題が、第二の命題に明らかに反していますので、そこから、総便益(B-3)の2兆658億円が架空の数字であることを論証したものです。これが経験則による論証でした。

 論理的な矛盾を導き出すために、第一の命題を次のように言い換えることにいたします。
 まず、第一の命題の「毎年961億円以上の水害が発生する」とはどういうことでしょうか。
 国交省が斐伊川水系の治水対策の大前提として掲げているのは、150年に一度の豪雨に見舞われても水害の被害を食い止める、ということでした。
 「150年に一度の豪雨」とは、昭和47年7月の「2日間雨量356mmのおおむね1割増である399mm」の豪雨のこととされています。この豪雨のもたらす水害の被害見込として公表されているのは、
のみで、具体的な被害見込金額(これが、被害軽減額(B-1)(“粉飾された2兆円-7”)の計算の基礎になるものです)は公表されていません。
 そこで、150年に一度の豪雨の際の、水害被害見込額を推計してみることにいたします。
 昭和47年7月の豪雨の際の浸水戸数は、家屋の全半壊も含めて、25,067戸でした。想定されている大水害による浸水戸数が前記のように50,700戸ですから、単純に浸水戸数だけでいえば、
ということになります。
  1. 2日雨量で1割増し
  2. 浸水戸数で2倍
の規模の豪雨水害ですから、被害見込額を“961億円以上”(第一の命題)としても差しつかえないでしょう。なぜなら、昭和47年7月の被害額である300億円(第二の命題)の3.2倍(961億円÷300億円=3.2倍)以上と計算されるからです。
 これをまとめてみますと、
『想定されている150年に一度の大水害による見込被害額は961億円以上である。』
ということになります。これは、第一の命題に第二の命題を加味して得られたものです。これを第三の命題と呼ぶことにします。
 第一の命題は、『斐伊川水系では毎年必ず961億円以上の水害が発生する』ということでしたし、第三の命題は、『想定されている150年に一度の大水害による見込被害額は961億円以上である』ということでした。ここで話をより分かり易くするために、“事業を実施したら水害被害がゼロになる”という仮定(“粉飾された2兆円-7”参照)を入れて、この二つの命題から“以上”の文字を削りとることにいたします。
 すると、第一の命題は、『毎年必ず961億円の水害が発生する』ということになり、第二の命題は、『150年に一度の大水害による見込被害額は961億円である』ということになります。
 これは、とりもなおさず、150年に一度の割合で起るとされた大水害が、毎年発生するということであり、論理的に明らかに矛盾しています。
 このことは、総便益とされている2兆658億円が、経験則からだけでなく、論理的にもありえないインチキであることを意味します。
(この項つづく)

 ―― ―― ―― ―― ――

 ここで一句。
“検定は あるのでしょうか 有識者” -成田、ま~いける。
(毎日新聞、平成20年4月28日号より)

(検定をする人にも検定がいるようで。)


<今の松江> (平成20年6月1日撮影)

堀川(片原町) 京橋(末次本町)
<左:堀川(片原町)> <右:京橋(末次本町)>

小径(東茶町) 松江大橋(末次本町)
<左:小径(東茶町)> <右:松江大橋(末次本町)>

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