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粉飾された2兆円 -10 . はてなブックマーク  Twitter   2008-06-24

 水増したインチキの経済効果を堂々と公表し、治水事業を継続する根拠としているのは、斐伊川水系だけではありません。どうも国交省河川局が全国的に統一してゴマかしているらしいのです。国交省出雲河川事務所だけではないということです。

 総務省が公表している『個別公共事業の再評価結果一覧』(平成16年3月29日省議決定)の中の、河川事業とダム事業のところを見てみますと、眼を疑うようなことが明らかになります。
 河川事業の一番初めと二番目に掲げられているのは、
“石狩川下流・上流直轄河川事業”
です(P.586)。この改修事業の
とされ、これに基づいてB/C比率が基準値である1より大幅に上回っていることを主な根拠として、この改修事業は継続するとの方針が示されています。
 問題なのは、ここで示されている18兆7,740億円とされている総便益(B-3)です。粉飾された2兆円-8で計算したようにこの18兆7,740億円から年便益(B-2)を逆算してみますと、
となります。
 年便益(B-2)が8,739億円であることは、
“石狩川水系では、毎年平均して8,739億円規模以上の水害被害が起る”
ことを意味します。
 一方、日本全国の水害被害額を見てみますと、平成9年から同18年までの10年間で、7兆2,805億円(水害統計、国交省)となっており、年平均額としては、7,280億円弱です。あるいはまた、昭和62年から平成18年までの20年間でみますと、13兆3,383億円となっており、年平均額としては6,669億円です(『平成18年度水害統計』P.119、国交省)。
 このことは、
“石狩川水系だけで、毎年の日本全国の水害被害額の1.2倍(8,739億円÷7,280億円=1.2)、あるいは、1.3倍(8,739億円÷6,669億円)以上の被害が発生する。”
ことを意味し、経験則に明らかに反しています。つまり、石狩川下流・上流直轄河川改修事業で公表されている経済効果18兆7,740億円は、全くの絵空事(えそらごと。荒唐無稽なつくり話のことです)であり架空の数字であるということです。
 ちなみに、総便益の最大値は「土岐川広域基幹河川改修事業」の24兆1,055億円となっており(P.624)、その年便益(B-2)を計算してみますと1兆1,221億円となります。このケースも当然のことながら明らかに経験則に反していますので、読者諸氏も計算して確認してみて下さい。

 試みに、河川事業とダム事業の再評価結果一覧(P.586~P.677)を集計したり、平均値を出したりしてみました(<表1><表2>)。さらには、B/C比率がどのように分布しているのか、グラフにしたのが<表3>です。

<表1>河川事業及びダム事業の集計値(※重複分は除外)


件数
総便益(B)
総費用(C)
河川
785件
323兆2,360億円
32兆0,049億円
ダム
100件
14兆2,505億円
3兆9,414億円
合計
885件
337兆4,865億円
35兆9,463億円

<表2>河川事業及びダム事業の最大値・最小値・平均値(※重複分は除外)


総便益(B)
総費用(C)
B/C
河川
最大値
24兆1,055億円
2兆3,680億円
124.7
最小値
0.57億円
0.08億円
0.55
平均値
4,117.66億円
407.71億円
9.22
ダム
最大値
2兆2,633億円
2,720億円
55.3
最小値
17億円
13億円
0.71
平均値
1,425.05億円
394.14億円
3.46
合計
最大値
24兆1,055億円
2兆3,680億円
124.7
最小値
0.57億円
0.08億円
0.55
平均値
3,813.41億円
406.17億円
8.57

<表3>B/C比率の分布。(横軸:B/C、縦軸:件数)

B/C比率の分布

 これによって、怪しげなことが2つ浮び上ってきました。
 一つは、総便益の単純合計が
 例によってこの337兆4,865億円を「年便益の計算式」に入れて年便益を逆算してみますと、
となります。
 これは、日本で現在工事が進行中の河川・ダム事業をもしやらなかったとしたら発生する、毎年の水害被害額を意味しています。
 一方で、工事中の水系だけでなく全ての水系の水害被害額を見てみますと、先に触れたように年平均で7,280億円、しかも、平成9年から同18年までの10年間で、被害額が1兆円を突破したのは、
2回だけなのです。昭和62年からの20年間でみても、平成9年以前では平成2年の
の1回だけが1兆円を超えています。
 全国の全ての水系の年間の被害額が平均で1兆円未満の7,280億円(10年平均)、あるいは6,669億円(20年平均)であり、かつ、多い年でも2兆円強であるにも拘らず、全体の一部でしかない工事中の水系の年の被害見込額が15兆円であるのは、明らかに経験則に反しています。

 二つは、B/Cの値がなんとも不自然な分布をしていることです<表3>。グラフで分かるように、テンデンバラバラの分布を示していますし、とりわけ異常なのは、885ヶ所の事業のうちで、
  1. B/Cの値の最小のものが、北海道の「厚別川準用河川改修事業」の0.55(P.602)。(これは事業中止となっています)であるのに対して、
  2. B/Cの値の最大のものが、宮城県の「白石川広域基幹河川改修事業」の124.7(P.605)となっている事実です<表2>。
 片や0.55、片や124.7。倍率にしてみますと、ナント226倍(124.7÷0.55=226.7)にもなります。しかも、一見して明らかに異常である、B/Cの値が30.0を超える工事が実に46ヶ所もあるのです。
 地域が異なり、個別の事情がそれぞれあるとはいえ、同じ日本の中の、治水を目的とした事業において、これほどまでにB/Cの値に極端なバラつきがあったり、開きがあるのは極めて異常なことと言わなければなりません。
(この項つづく)

 ―― ―― ―― ―― ――

 ここで一句。
“もう麦も 食えなくなった ビンボー人” -さいたま、影無。
(毎日新聞、平成20年4月28日号より)

更に一句。
“平成の 貧乏人は 米を食え” -海老名、水無月。
(毎日新聞、平成20年5月5日号より)

(そう言えば、“ビンボー人は麦を食え”と言い放った昭和の宰相がいましたね。)


【付記】

 先週は国交省絡みで2つの驚くべきニュースが配信されました。
 一つは、本日ブログで取り上げている石狩川の河川改修工事に絡んで、国交省の北海道局長が逮捕(談合の疑い)されたことです(北海道新聞6月17日)。石狩川だけでなく、全国のどこのダムとか河川工事においてもこのような談合を含む不正がなされていることは、異常なB/C比率を見れば容易に推測されることです。
 二つは、淀川流域での四つのダム建設について、国交省は、諮問機関の意見(建設は不適切)を無視して建設を強引に進めることを決定したことです(毎日新聞6月21日)。ブログで取り上げている大橋川改修工事では、河川法に基づく地域住民の意見を聞く場さえ設けられていないのです。このようなことがまかり通るのは河川法がザル法であることを示しています。まさにやりたい放題、何でもありといったところです。
 これらについては、稿を改めて詳論する予定です。


<今の松江> (平成20年6月1日撮影)

堀川(母衣町) 堀川(母衣町)
<左:堀川(母衣町)> <右:堀川(母衣町)>

宇賀橋(殿町) 北惣門橋(殿町)
<左:宇賀橋(殿町)> <右:北惣門橋(殿町)>

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