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粉飾された2兆円 -7 . はてなブックマーク  Twitter   2008-06-03

 費用便益の比率(B/C比率)は、粉飾された2兆円-1で説明しましたように、費用(C、コスト)と便益(B、ベネフィット)との比率です。国交省は、この治水事業の費用を6,047億円、便益を2兆658億円とし、その比率として、3.42の値を公表している訳です。
 費用として提示されている6,047億円についてもよく見てみるとオカシナ点がいくつかあるのですが、結果的にはさほどの影響がありませんので、ここでは一応正しいものと考えることにいたします。問題なのは便益として提示されている2兆658億円という数字です。この値について、『マニュアル』の考え方に添って吟味し、現実にはありえない数値であるだけでなく、論理的にも矛盾する数値であることを示します。
 
 吟味するのに先立ってまず押さえておくべきことがあります。それは、便益とは何かということ、つまり便益の定義を確認することと、今一つ、便益といわれているものに三つのものがあるということです。

 まず、便益の定義について。
 便益とは何か、-『マニュアル』で言っている便益とは、
“洪水氾濫被害の防止効果”(P.37)
のことです。つまり、その治水事業を行なうことによって防ぐことのできる水害の金額ということです。

 次に、3つの便益について。

 一つは、『マニュアル』が『被害軽減額』(P.60)と呼んでいるもので、想定されている水害の被害金額のことです。大橋川改修計画を含むこの治水事業が想定しているのは、150年に一度の割合で起るおそれのある大水害(具体的には、150年に一度、2日間の降雨が399mmに達するときに起る水害のことです)ですから、おおむね(つまり、事業を実施したら水害被害がゼロになると仮定すれば)そのような大水害による被害金額を最大のものとして、それより小さい水害被害をも加えたものということになります。これを以下では、ベネフィット1(B-1)と呼ぶことにします。

 二つは、『年平均軽減期待額』(P.60)、あるいは単に『年便益』(P.61)と言われるものです。これは、大雨の度合別に計算された『被害軽減額』(B-1)にそれぞれに対応する洪水の生起確率を掛けて計算するとされています。この治水事業に即して言えば、「150年のうちに一度、2日間の降雨が399mmである確率」をB-1の中のその被害金額に掛け、順次、それより小さい水害の場合にも同様に生起確率を掛けて計算し、その全てを集計した金額のことです。平たく言えば、『治水工事を行わなければ、一年のうちに受ける水害被害見込額』ということです。これを以下では、ベネフィット2(B-2)と呼ぶことにします。

 三つは、『総便益』(P.61)と言われているものです。これは、治水事業の効果が続く期間の『年便益』(B-2)を積み上げたものです。具体的に言えば、50年間の『年便益』(B-2)を4%で割り引いて加えた金額(総和)ということです。ここで用いられているのがDCF法です。これを以下ではベネフィット3(B-3)と呼ぶことにします。

 このように、便益(ベネフィット)とは「被害金額」のことであり、その便益には、
  1. 被害軽減額(B-1)
  2. 年便益(B-2)
  3. 総便益(B-3)
の3つのものがあることをキッチリと押えておくことにいたします。
 『マニュアル』の手順としては、1.の被害軽減額(B-1)を計算してから2.の年便益(B-2)の計算へと進み、それをもとにして最後の3.の総便益(B-3)を計算することになっています。ところが、現在明らかにされているのは3.の総便益(B-3)の2兆658億円だけで、1.の被害軽減額(B-1)も、2.の年便益(B-2)も明らかにされていないのです。
 ここでは公表されている総便益(B-3)をもとにして、『マニュアル』の考え方に沿ってまず2.の年便益(B-2)を逆算してみることにいたします。
(この項つづく)

 ―― ―― ―― ―― ――

 ここで一句。
“政治家に なぜ助成金 やってるの” -宇都宮、坂本喜市。
(毎日新聞、平成20年4月23日号より)

(政党助成金。やってはいません、お手盛りです。)


<今の松江>

 中流域の大橋川(平成20年5月17日、撮影)
多賀神社前 多賀神社前
<多賀神社前>

多賀神社前 多賀神社前
<多賀神社前>

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[1373] Re1: 粉飾された2兆円 -7 投稿者:陀 2008-06-06 01:38:14
大橋川改修事業に関心があります。
治水経済マニュアルにおいて洪水被害の算出の元となっているのは「流量規模」と書かれています。したがって150年に1度の確率で斐伊川の基本高水流量5,100m3/sが発生することを前提として、洪水被害が算出されるはずです。ところが河川整備基本方針の記述を見ると、年最大流量の超過確率が妥当に算出されたか甚だ疑問です。また、2日雨量399mmの超過確率が1/150であっても、発生する流量が必ずしも1/150でないので、区別して考える必要があります。
洪水被害の「年平均軽減期待額」の計算において、以上のことを考慮した評価がなされるべきと思います。
今後の議論の展開を期待しています。

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