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ホリエモンの錬金術 -12 . はてなブックマーク  Twitter   2005-05-31

 その“1枚”とは何か。

 堀江さんは、上場から2ヶ月余りの後の平成12年6月16日に、関東財務局長宛に「大量保有報告書」を提出しています。証取法第27条の23第1項に基づくものです。
 この報告書は、備え付けの用紙に手書きされており、A4版で3枚から成っています。署名は相当クセのある字ですので、堀江さんの自筆でしょう。資料Hに掲げたのがその3枚です。
 私が注目したのは、3枚のうちの最後の1枚でした。そこには、堀江さんが保有している株式7,920株の取得資金の内訳と借入金の内訳とが明らかにされています。
 取得資金は269,000千円とされ、内訳は、自己資金29,000千円、借入金240,000千円となっていて、株式公開情報の記載と大きく矛盾するものではありません。

 つまり、
  1. 平成11年11月4日、現在の所有株式は580株で、一株5万円で取得していますので、その取得資金が29,000千円ということでしょう。ただ、この29,000千円全てを自己資金としているのは疑問ですね。上場前には個人のキャッシュはほとんどなかったはずです。
  2. 平成11年11月5日、有馬晶子さんから一株300万円で120株購入、その購入資金は3億6千万円。この資金はどこかから借りたのでしょう。
  3. 平成11年12月17日、大和証券SBCM株式会社へ30株、株式会社光通信パートナーズへ10株、それぞれ一株300万円で譲渡、その譲渡代金は1億2千万円。
  4. 3.の譲渡代金1億2千万円を2.の借入金3億6千万円の返済に充てたものとすれば、借入金の残高は2億4千万円となります。
 このように、29,000千円全額を自己資金で賄ったとしているのに疑問が残りますが、借入金2億4千万円については金額的にはツジツマが合います。
 ところが、この2億4千万円の借入金の内訳を見るに及んで、びっくりしてしまいました。目を疑いましたね。
 ナント、有馬純一郎さんから借りたというのです。これはまた一体どういうことでしょうか。

 私は、この“1枚”に出会うまでは、有馬晶子さんからの株式買取に要した3億6千万円は、てっきり株式会社光通信あたりから借りたものとばかり思っていました。
 また、堀江さんは、本の中ではこの買取資金を5億円であるとして、銀行から短期借入として個人で借りたと言っていますが、冗談でしょう。
 5億円の借入金は、上場後に返済する約束であったと、まことしやかに述べているのですが、上場を準備していたとはいえ、まともな利益を出していない設立後いまだ日の浅い会社の社長に、5億円を融資する銀行があるでしょうか。個人資産もゼロに近い状態どころか、自己資金として報告した株式の取得資金29,000千円のほとんどは、有馬純一郎さんから借りたものですので、個人資産はマイナスの状態であった堀江さんに対して、通常の銀行であるならば5億円はおろか、1千万円でさえ貸すことはなかったでしょう。現在の銀行の融資システムの上ではまず不可能だからです。

 仮に百歩譲って、真実、堀江さんに対して銀行が5億円の短期融資に応じていた場合を想定してみましょう。
 本の中で、堀江さんは、
“その翌年、東証マザーズへの上場は成功したけれども、売るタイミングがなかなかなくて返済はすぐにはできず、銀行に一度は繰り延べしてもらった。でもその後は、きちんと返済し、借金はなくなっている。”
(前掲書、P.120)
と言っています。ジョーダンが次第にエスカレートしてきました。
 銀行の短期貸付は、一年以内に返済する約定のもので、通常は長くとも半年で切り替えするケースが多いものです。
 堀江さんは、“一度は繰り延べしてもらった”と言っていますので、通常であれば、その返済期限は、平成12年内となります。どんなに長くとも平成13年12月末を超えることはないでしょう。堀江さんは、自分の持株を売って5億円の返済をしたと言っているのですが、この期間(平成12年4月~平成13年12月末)にそれに相当する株式の売却収入はありません。彼が6億円余りの売却収入を手にするのは、上場から2年4ヶ月が経過した平成14年8月のことなのです(「ホリエモンの錬金術 -6」資料A参照のこと)。
 つまり、5億円を返済したと言っている時期に、返済財源が存在しない訳で、彼が本の中で“上場後に返済した”と言っていることも事実でないことが判ります。

 前述の通り、この3億6千万円は、ツルんでインチキ上場を計画した株式会社光通信の重田康光さん(堀江さんは平成10年に初めて出会い、2年近くの間、2人でゴマカシのシナリオを練っていたようです)あたりから個人的に借用して小細工したものとばかり思っていたのですが、有馬晶子さんの父親である有馬純一郎さんから借用したものであるとすれば、事情が大きく異なってきます。
 有馬晶子さんと有馬純一郎さんとは、娘と父親の間柄です。しかも、会社に出資したお金に関しては、全て父親が負担しており、株式の名義は娘である有馬晶子さんであったとしても、実質的にはスポンサーである父親のものであると考えるのが順当でしょう。
 するとどうなるでしょうか。有馬晶子名義の自分の株式120株をホリエモンが買い取るための資金3億6千万円を、自分がホリエモンに貸し付けるというまことに奇妙なことになります。
 つまり、自分が出した3億6千万円が形の上ではホリエモンを経由して直ちに自分に戻ってくる訳で、実際のキャッシュの動きはないことになります。私が、この3億6千万円の取引が実際には行なわれていない架空の取引であると推断するのは、このようにキャッシュの動きがなく、見せかけのものであると判断したからです。

 そこで、残されている有馬純一郎さん名義の株式960株が上場後にどのようになっていったのか、追跡してみました。その結果、トリック(300万円という架空株価)をゴマかすための小細工という、当初想定していた枠をはるかに超えるインチキの実態が浮かんできたのです。

 ―― ―― ―― ―― ――

 ここで一句。
“銅像にけっこうなってる悪い人” -北九州、秀丸。
(毎日新聞:平成17年4月25日号より)

(そのうち“平成のITベンチャーの雄”なる銅像がどこかに建立されるかも。)



●資料H

※クリックすると各大量保有報告書が表示されます。

「大量保有報告書(平成12年6月16日)」 P.1

大量保有報告書1

「大量保有報告書(平成12年6月16日)」 P.2

大量保有報告書2

「大量保有報告書(平成12年6月16日)」 P.3

大量保有報告書3

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[226] Re1: ホリエモンの錬金術 -12 投稿者:通りすがり 2005-05-31 12:18:54
 #180で引用した金融庁の大森市場課長。
 雑誌『金融ビジネス』の5月号でも同じネタを使っている。

「人間というのは殴られないと目が覚めないので、いまや敵対的買収への恐怖から、『株主に報いる』という経営マインドが急激に高まっていますよね」
「今期は3分の1の企業が増配するそうだけども。
 だから、あと何年か経ってみると、『日本の上場企業のガバナンス向上のいちばんの功労者はライブドアだった』なんて評価になるかもしれないですよね」
http://www.toyokeizai.co.jp...

 もっと不思議な話が『金融ビジネス』という雑誌の季刊化だ。
 世の中が「これからは益々もって経済の時代だ」「そうだ、金融の時代だ」「実体経済が軽んじられ、社会が金融ゲーム化してきた」といわれて久しい。
 そうした中、金融専門誌は売れ行き不振を以って廃刊に等しい運命となる。
 同誌は東洋経済新報社が1985年に創刊したものでおよそ20年の歴史があったが、出版不況の前には「金融の時代」も掛け声倒れか。
[227] Re2: ホリエモンの錬金術 -12 投稿者:素人 2005-05-31 19:23:30
堀江は自身のblogで平成14年8月の株売却分で借入金を返済したと記しています。

http://blog.livedoor.jp/tak...
>14年3月とくらべて、15年3月に1,636株減っている件ですが、
>証券税制が変わる際にいわゆる簿価上げクロス取引を行っており
>(申告分離課税への一本化)、その際の売却になっております。
>その額のうちほとんどは上場前に当社株の買取を行った際の
>借入金返済に充当しております

「ほとんどは」と書いているくらいなのだから借入金は
2億4千万でも3億6千万でもなく、5億なんでしょう。
堀江がウソツキでないなら。

5億も借りていたら、利息分もバカにならない数字だと思うのですが
非常にのんびりとした返済ですね。
借金してると良いことでもあるのですかね?税金が安くなるとか。

ちなみに同じコメント内にある300万株については100分割&フェイル時の
過剰貸し株分ではないかとの疑惑があります。
IR担当の熊谷は「ただ単に3月末に証券保管振替機構に預けていた
300万株を引き出しただけなのです」と言っているようですが、
一体どんな理由で保管振替機構に預けていたのですかね?
[228] Re3: ホリエモンの錬金術 -12 投稿者:るるる 2005-06-01 00:42:29
よく、新世代と旧世代の対立と言われますが
これは、ライブドアに限らず、日本のITベンチャーの多くに共通するでしょうが、実態の
ない会社や利益を野放しにしておけば
最終的には、経済全体が腐ります。

それは、バブル崩壊で散々懲りたはずだと
思うのですが、閉塞状態のこの国では
どんな手を使ってても、カネさえ稼げば
いいというモラルの低下が起きてしまって
いると思います。
バブル期と同じような手法で、みかけを
膨らますしかできないようでは、旧世代を
さらにダメにしたのがホリエモンだと
言われても仕方がなく、彼に旧世代を批判する資格など、どこにもないというのが現実
だと思います。
[229] Re4: ホリエモンの錬金術 -12 投稿者:川村 2005-06-01 12:25:56
山根さん

この資料を探しだしたのは素晴らしいです。
さすがの私も、これには驚きました。
借金した相手が有馬さんだとは・・・・

堀江さんの社長日記に紹介して
質問してみました。彼が答えてくれるのか無視されるのかわかりませんが
しばらく様子を見てみようと思います。
[230] Re5: ホリエモンの錬金術 -12 投稿者:通りすがり 2005-06-03 01:31:08
……証券取引法の開示規制の下で公認会計士・監査法人および引受証券会社は、発行会社の開示情報の正確性を担保する責任(デュー・ディリジェンス責任)を課されることを通じて、発行会社のコーポレート・ガバナンスに資する。
 これらの者は、アメリカでは一般にゲートキーパーと称される。
 しかしながら、証券市場では、公認会計士・監査法人や引受証券会社の他にゲートキーパーであると理解されている者が存在する。
 たとえば、社債等の負債証券の信用性を格付する格付機関であり、さらに、証券アナリストである。
 これらの者も、方法および程度に関して差はあるが、発行会社の開示情報、および、それに関係する様々な情報を入手し、それらを評価する。
 これらの者は、公認会計士・監査法人や引受証券会社と同様の責任を負わないが、その専門的能力に基づき発行会社を評価した情報を証券市場および投資者に提供することを通じて、発行会社のコーポレート・ガバナンスに資する。

 上記は「証券取引法の視点からのコーポレート・ガバナンス」より。
http://www.mof.go.jp/jouhou...
(2004年8月、上智大学法学部助教授野田耕志:財務省財務総合政策研究所研究部)

 上記論文にある、

「さらに、証券アナリストである。これらの者は、公認会計士・監査法人や引受証券会社と同様の責任を負わないが、その専門的能力に基づき発行会社を評価した情報を証券市場および投資者に提供することを通じて、発行会社のコーポレート・ガバナンスに資する」

 といった部分が我が国では、まるっきりウソで固めた蜃気楼となってきた。
 いや、それどころか発行会社のための幇間(たいこもち)を任じて来たのである。
 あるいは大井競馬場の予想屋とドッコイの勝負だ。
 額の鉢巻に馬券を手裏剣のように差し込んで、一乗寺の宮本武蔵を気取った証券アナリスト?

 さて、アメリカの証券アナリストもエンロンやワールドコム事件等で、ヨイショぶりを糾弾された。
 しかしながら、一つだけ確実なことはアメリカの証券市場は投資家のコストパフォーマンスが、圧倒的に素晴らしかったのである。

 以下は直近20年間で日本とアメリカの投資家が、いかなるリターンを受け取ったか?

『なぜ株は儲からなかった』
http://www.tokyo-outlaws.or...
[231] Re6: ホリエモンの錬金術 -12 投稿者:koji 2005-06-03 05:32:26
メディアリンクスもそうでしたがライブドアのインチキ振りはIT業界では有名です。自分に火の粉がかかるから黙っているだけです。経済全体が腐っている。
[232] Re7: ホリエモンの錬金術 -12 投稿者:ももんが 2005-06-03 21:59:14
何故逮捕されないのでしょう?
インチキ会社を上場させるのは犯罪ではないのでしょうか?
[234] Re8: ホリエモンの錬金術 -12 投稿者:達也 2005-06-07 10:11:29
毎回の素晴らしい分析に驚嘆するとともに、そのご努力に深甚の敬意を表します。

ライブドア問題を、馬鹿マスコミは過去の問題として報道しなくなりました。しかし、山根さんの冷静沈着な分析により、この会社の本質が、資本市場に対する悪質で大がかりな詐欺であることが証明されつつあります。

そうした知見は「未来」を見通す力となります。わあわあ騒ぐだけのマスゴミ報道は、私たちの進路を誤らせるデマ情報にしかなりません。

新聞よりも週刊誌、週刊誌よりも月刊誌、月刊誌よりもインターネットのほうが、未来を探る手がかりになる、とつくづく思います。

この連載に山根さんの知見を書き加えて、暴露本としてではなく、日本の資本市場のあり方を見直す警世の書として刊行されることを期待しています。

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