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MA経済事件ノート

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A16 ハニックス工業 事件の真相 16 . はてなブックマーク  Twitter   2005-03-10

2. 密告の蓋然性

 取引銀行が国税当局に密告したかどうか今となっては確認のしようがない。
 しかし、いくつかの状況証拠が、密告の蓋然性を物語る。

(一) 国税当局は、同社の社長の弟であり副社長であったB氏によれば、”脱税”の事実を把握した上で調査に臨んだという。つまり、国税当局は事前に情報を得ていたということだ。
 国税当局はどのようにしてその情報を得たのであろうか。

 会社の4人の幹部名義の株式21万3千株が店頭公開直後に売却され、32億円を上回る売却益を得たとされ、4人共個人所得として平成3年に既に確定申告を終えている。
 ここまでであれば、国税当局は情報を把捉している訳であるが、これを一歩進めて、「売却された株式は個人の所有ではなく、会社の所有である」とする情報は、国税当局が収受した確定申告書の上からは分らない。
 この4人の幹部が事前に事情聴取された形跡はなく、国税当局はそれ以外の情報源から情報を得たと考えるほかない。その情報源はどこか。
 まず会社内部について。そもそも4人が売却した株式は、株式公開に先立ってなされた第三者割当増資によって取得されたもので、この情報は会社の機密に属するものだ。このため、会社の内部においてさえ、ごく一部の者しか知りえない情報であり、諸般の事情を勘案するに内部からの密告はまずありえない。
 とすれば、情報源は会社外部ということになる。
 では、外部の者で、この情報を知りうる立場にあった者は誰か。それは、幹事証券会社、監査法人、それにメインバンクの三者でありこの三者以外は考えにくい。
 このうち、幹事証券会社と監査法人が密告することはとうてい考えられない。共に、同社が店頭公開するに際して重要な役割を担い、それだけに大きな責任を有している当事者であり、”仮装の自己株式によって会社が32億円という巨額の違法利益を株式公開に便乗して稼いだ”(これがマルサの言い分である)などということを密告することなど、自らの重大な非を自白し、自分の首を絞めることになるからだ。
 すると、消去法によって、メインバンクしか残らないことになる。メインバンクであれば、金の流れは熟知しているわけだ。

(二)銀行の対応が余りに速かったことも状況証拠の一つである。
『平成5年5月25日午後4時半。日経のクイックにハニックス工業が法人税法違反の疑いで告発され、追徴額が17億円を超す、というテロップが流れた(H社長は事実を否定)。翌26日の新聞を見て取引銀行の態度が急変する。』-週刊ダイヤモンド、平成5年8月28日号。
 メインバンクを中心に各銀行が次々に預金封鎖(質権設定)の挙に出、150億円あったとされる預金が決済資金として使えなくなり、同社はマルサ告発の記事がでた3日後の同月29日に会社更生法の申請を余儀なくされたのである。
 既に述べた通り、株式を公開している会社が脱税の告発報道によって倒産したことは前代未聞のことである。更に、銀行が17億円余りの脱税告発の報道を受けて、10倍近い150億円もの預金を直ちに封鎖したこともまた前代未聞のことだ。いい口実ができたとばかりに融資金の回収を図ったのが透けて見えるようである。
 銀行がこのような行動をし、かつ追加融資の道を鎖したとすれば、ハニックス工業ならずとも、ほとんどの会社は倒産せざるを得ないであろう。
 銀行はことの真偽を敢えて確認することなく(ちなみに、告発記事が出た時点で、銀行が幹事証券会社か、あるいは監査法人に確認しさえすれば、マルサの告発が荒唐無稽なものであることは直ちに判明したはずだ)、重荷になっていた会社の引導を渡す大義名分ができたとばかりに、直ちに預金封鎖に踏み切ったのではないか。

(三)マルサの責任者であった大木洋が当時私に漏らした言葉、-
”マスコミの報道は一面的なもので、真相は違っている。ハニックス工業は国税当局の告発があろうとなかろうと、既に経営的に行き詰っていたのであり、金融機関が預金を凍結したり、融資をストップしたのは、国税当局の告発を奇貨としてなしただけのことである。”
 大木が同社の倒産は、マルサの告発が原因ではなく、”真相”は違っていると自信を持って強調していたのは、大木が銀行の裏工作を知っていたからではないか。
 国税局まで乗り込んで、マルサの非道な行為を訴えて自決したことは、国税当局、とりわけ名指しされたマルサにとっては衝撃的なことであったろう。放っておいたら税務調査の現場の志気を沮喪させることにもなりかねないために、急遽、銀行からの密告を含む一連の事情を説明した文書が全国の国税局に配布されたのではないか。

 取引銀行が国税当局に偽りの脱税情報を密告したことは、以上のような3つの状況証拠に照らしてほぼ間違いないであろう。
 とくに、常識では考えられない銀行の素早い対応と、マルサの大木洋の自信に満ちた言葉とは、私が密告の噂を耳にするまでは、何かすっきりしないものとして胸につかえていたものである。
 しかし、倒産の大義名分を作るために、銀行が偽りの情報を国税当局に流したのが事実であるならば、私の胸のつかえはきれいに取り払われ、潜んでいた犯罪的謀略の全貌がより鮮明に浮かび上がってくるのである。

 この記事を終わるにあたって、59歳で無念の死を遂げたハニックス工業のH社長のご冥福を心から祈りたい。合掌。
(了)

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