携帯 - コメント一覧 - 更新記録 - サイトマップ  

MA山根治blog

フォレスト・コンサルタンツ
icon HOME icon 会社案内 icon 冤罪を創る人々 icon 引かれ者の小唄 icon 経済事件ノート icon 山根治blog

天の逆手(あまのさかて)-1 . はてなブックマーク  Twitter   2013-08-13

 「天の逆手(あまのさかて)」という言葉がある。事代主神(コトシロヌシノカミ)が国譲りの際に打ち鳴らした拍手(かしわで)のことだ。
 大国主命(オオクニヌシノミコト)の御子神である言代主神(コトシロヌシノカミ)が、天照大御神(アマテラスオホミカミ)が遣わした神の強談判に屈して国譲りを承諾し、
「この国は、天つ神の御子に立奉(たてまつ)らむ」
と言い残して、自らは乗っていた船を蹈(ふ)み傾(かたぶ)けて、
「天の逆手を青柴垣(あをふしがき)に打ち成して」
隠れていった(死んでいった)と伝承される中に出てくる拍手のことだ(古事記、岩波文庫版、P.61)。

 「天の逆手」については、一体どのような意味なのか、どのような所作をするのか、昔から諸説紛々、未だに定まっていない。
 後手(うしろで)に叩く、手の甲と甲を打ち合わせる、頭の上で打ち合わせる、いずれも通常の拍手の作法とは異なったものと考えたり、意味については、呪術の一種ではないかとする説がある(注)。この呪術説、平安時代の「伊勢物語」96段にでてくる「天の逆手」がまさにそれだ。呪術(かしり。麻自那比(まじなひ))の意で用いられている拍手である。

 その後、契沖、本居宣長(古事記伝)も同様の解釈をし、現代の学者の多くもそれを踏襲している。
 古代出雲王国が恨みを残して滅亡したという伝承をもとに、「逆手」を字義通りに解釈したものとも考えられるし、あるいは、古事記の作者である太安麻呂(おほのやすまろ。多品治(おほのほむじ)の息。古代出雲王国につらなる家柄)が、敢えて「逆」の字を用い、恨みの思いをひそかに込めたものとも考えられている。
 このような呪術的な解釈に真っ向から異を唱えたのが伴信友(ばんのぶとも)だ。伴信友のプロフィールは次の通り。
『江戸後期の国学者。近世考証学の泰斗。若狭小浜藩士。1821年(文政四)致仕後、力を和漢の学に傾け、本居宣長没後の門人。著「比古婆衣(ひこばえ)「仮字本末(かなのもとすえ)」「長等(ながら)の山風」など。(1773-1846)』(岩波書店、広辞苑)

 伴信友と同時代の国学者に、平田篤胤(ひらたあつたね)がいる。伴信友と同様、本居宣長の没後の門人で、伴より3歳年下である。
『江戸後期の国学者。国学の四大人の一。はじめ大和田氏。号、気吹舎(いぶきのや)、真菅乃屋(ますがのや)。秋田の人。本居宣長の没後の門人として古学の道に志し、復古神道を体系化。草奔(そうもう)の国学として尊王運動に影響大。著「古史徴」「古道大意」「霊能真柱(たまのみはしら)」など。(1776-1843)』(岩波書店、広辞苑)

 この2人、たがいに深く認め合っていた。信友に宛てた書簡の中で篤胤は、「神の結び給へる兄弟なること決なし」とまで断じ、「故翁(本居宣長)の未作竟(いまだ作りおえざるところ)あることを、君と吾と兄弟となりて作固めてよと、幽に結び賜へるならん」と述べ、2人の間には「極めて幽き契」があるはずだとまで踏み込んでいる(大鹿久義編著「伴信友来翰集」-錦正社。P.181~P.183)。神が介在しているだけに、「管鮑(かんぽう)の交(まじわ)り」をはるかに超えた間柄であるというのである。
 復古神道の体系化を目指した平田篤胤は、訓詁(くんこ)、考証学の領域を大きく踏み外し、いわばオカルト的な領域に立ち入ることになった。神道が、復古神道の名のもとにカルトと化したのである。明治維新に際して、神道が唯一の宗教、即ち国家神道とされるに至った背景には、カリスマ性を帯びた平田篤胤の存在が大きいとされている。
 一方の伴信友はどうか。篤胤と同様に宣長を師と仰ぎ、同門の篤胤に、年上ながら一目も二目も置いていた信友ではあったが、篤胤とは決定的に異なるところがあった。それは、訓詁、考証学に徹したことだ。篤胤のようにオカルトの分野に踏み入ることはなかった。冷徹なまでに考証にこだわる生き方を貫いたのである。
(この項つづく)


(注)「天の逆手」(1) 呪術を行うときにする手の打ち方。 (2) (転じて)恨みのろうしぐさ。(小学館、古語大辞典)

 ―― ―― ―― ―― ――

 ここで一句。
“神の手も名医もおらず長寿村” -熊本、ピロリ金太
(毎日新聞、平成25年7月9日付、仲畑流万能川柳より)

(“ノーベル賞 経済学者が 自己破産”)

天の逆手(あまのさかて)-1 (2013-08-13) . はてなブックマーク  Twitter  


関連するカテゴリー

前後のページ

このエントリーへのトラックバック

   [告知] ※トラックバックスパムが多いので、トラックバックの受付を停止いたします。(2006-08-08)


このエントリーへのコメント

   [告知] ※コメントの書き込みができない場合があるようですが原因を特定することができないので、コメントの受付自体を停止いたします。(2015-03-31)


Copyright©2004-2017 "Forest Consultants Co.,LTD". Powered by Nucleus CMS v3.65.