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脱税摘発の現場から-3 . はてなブックマーク  Twitter   2010-07-27

3.最近の相談事例(承前)

 三年間の資格停止期間(「冤罪を創る人々」前科者としての元公認会計士参照)を終え、会計士と税理士の再登録が完了してほどなく、相続に関する脱税事件の相談が舞い込んできた。脱漏額10億円超、追徴税額は本税・重加算税合わせて10億円超という大型事案である。第一審判決が下った直後のことで、地裁の判決は、
相続人に実刑、罰金は3億円超
といった厳しいものであった。
 
 詳しく話を聞いていくうちに、なんだかおかしいことが分かってきた。査察のインチキ臭がプンプンするのである。膨大な裁判資料に目を通すに及んでそれは確信に変っていった。間違いなくどこかでゴマカシが行なわれている。それは何か。
 事件の概要を把握した私は、三人の弁護士に呼びかけて弁護団を組み、国税不服審判所の審査請求と控訴審の弁護を引き受けることにした。一人は市民オンブズマンの代表をつとめ、数多くの行政訴訟に成果をあげている弁護士であり、一人は、これまでに無罪判決を20以上もかちとった実績のある刑事専門の弁護士である。今一人はこれら二人のベテラン弁護士をサポートする実務能力に秀れた若い弁護士であった。
 事件を引き受けてから二年あまり、私達はその間十数回の弁護団会議を開催し、問題点の洗い出しを徹底的に行なった。審査請求をし、控訴趣意書を提出してから一年以上が経過しているが、いまだ審査請求も放置されたままであるし、控訴審も開かれていない。ことに刑事事件の控訴審が一年以上も放置されているのは異例のことだという。高裁もかなり慎重になっているようである。

 この事件について判明した国税と検察のインチキのシナリオは次の通りであった。

1.故人(被相続人)のものとされ、相続財産とされた大半は、故人のものではなく、第三者のものであったにも拘らず、強引に故人のものと認定。

 このインチキ認定の根拠とされたのが、関係者の供述と怪しげな「財産形成シミュレーション」であった。
1)関係者の供述について
 数十時間に及ぶ査察の取調状況のほとんど全てが録音されていたこと、検察側証人として出廷する前に検察庁で行なわれた「証人テスト」と称する口裏合わせの状況が録音されていたことによって、質問てん末書(査察作成)と供述調書(検察官作成)とが真実にもとづくものではなく、騙しと強迫によって創り上げられたシロモノであることが明らかになった。私の冤罪事件と全く同じことがここでも繰り返されていたのである。ちなみに、この事件を取り仕切った検察官は、私の冤罪事件をデッチ上げたインチキ・グループの一員であった。
2)「財産形成シミュレーション」について
 インチキのシナリオに合わせるように創り上げられたもので、いくつかの点でミエミエの小細工が施されていた。小細工を補正した上で、改めて「財産形成シミュレーション」を行なったところ、逆に、残された財産の大半は故人(被相続人)のものではあり得ないことが明らかになった。
 国交省が、費用対効果(B/C)を計算するのに姑息なインチキを施しているのと同断である。

2.相続財産とされたうちの現金残高を6億円余りも水増し認定。

 全ての預金等の動きが相続開始前10年以上にわたって克明に追跡調査されており、かつ、ガサ入れ時点での現金を含めた財産がキッチリと把握されているのであるから、相続開始時点の現金残高の把握は簡単にできるはずである。
 ところが、査察が行なった計算は、通常の実務慣行を無視した誠に珍妙としかいいようのないものであって、明らかに間違っていた。しかも、間違っていることが簡単に証明できるものであった。

 このようなインチキが、なぜまかり通るのか不思議である。第一審では多額の追徴を認めて相続人の財産をほとんど取り上げただけでなく、懲役の実刑と巨額の罰金まで下しているのである。
 先に述べたように、査察のインチキ・シナリオが、チェック・システムを欠いた現在の司法制度に乗っかって、素通りしている。検察官、裁判官の責任が大きいのは当然ではあるが、弁護人の責任も重大だ。
 この事件の第一審弁護人は、税金裁判を数多く取り扱っている弁護士であり、それなりに名の知られた存在であった。ところが、まともな弁護活動がなされていなかった。国税と検察のインチキ・シナリオの解明が全くなされていない。とりわけ肝腎の数字の読み込みがなされていないのである。
 査察官調書だけでも、この事件の場合6,000枚にも及ぶものだ。しかもそのほとんどが数字の羅列である。実のところ、このような数字を読み解き、厳格な証明をチェックするのは弁護士の仕事でもなければ、税理士の仕事でもない。広い意味での監査の仕事であり、私達会計士の仕事である。鑑定と言ってもいいかもしれない。脱税事件だけでなく、民事として扱われる税務訴訟においても、数字がからむ「厳格な証明」がキーポイントとなる以上、私達会計士の役割は重大である。
(この項つづく)

 ―― ―― ―― ―― ――

 ここで一句。
“カレーだな明日は俺は留守番か” -枚方、ただの人。
(毎日新聞、平成22年7月13日付、仲畑流万能川柳より)

(刑務所のカレーはうまかった。朝早くから拘置監の房内にまでカレーの香りが漂ってくると、昼食か夕食にカレーがついた。あのカレーだけはもう一度食べてみたい。)

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