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「税務調査ノート」改訂版について . はてなブックマーク  Twitter   2010-05-18

 先日「強制調査(査察)ノート」を公開したところ、各方面からの反響があり、中には、強制調査(査察)だけでなく、通常の税務調査への対抗策についても知りたいという意向がありました。
 そこで、既に公開していますが、あらためて「税務調査ノート」の改訂版をご案内いたします。

 「税務調査ノート」のダウンロードは下記ページより可能です。

税務調査ノート
tax.ma-bank.net/note.php

「税務調査ノート」作成の勧め


1. 担当調査官に対する牽制となります

 あなた自身によって、税務調査の状況が克明に記録されていることが分かれば、国税局や税務署の担当調査官としても、不当な税務調査をしにくくなるはずです。

2. 税理士の理解の助けになります

 税理士も、あなたの作成した「税務調査ノート」を読めば、税務調査の経緯を理解しやすくなります。

3. あなた自身が権利を自覚するのに役立ちます

 あなた自身も、納税者の権利(後述する「税務調査の対策や対応、注意点」を参照)を自覚するのに役立つほか、税務調査の際のあなたの受け答えを反省し、今後の税務調査に備えやすくなります。

4. 苦情を申し入れる際の資料になります

 納税者支援調整官制度や請願法を利用して、税務調査に関する苦情を申し入れる際、「税務調査ノート」に記録されていれば、その経緯を明らかにしやすくなります。

5. あなたの心の支えになります

 そして、この「税務調査ノート」に税務調査の状況を書くことは、厳しい税務調査の中で頑張りぬくための心の支えにもなります。

【謝辞】 「税務調査ノート」は「被疑者ノート」(日本弁護士連合会)を参考に作成いたしました
 

税務調査の対策や対応、注意点


1. 税務調査の立会人に関する注意点

 まず信頼できる人に立会ってもらうことです。必ずしも税理士である必要はありません。
 国税局や税務署は守秘義務などを持ち出して税理士以外の立会人を認めようとしないようですが、税務調査の立会いは税理士の独占業務ではありませんし、税務当局が税理士以外の立会人を排除する合理的な理由は見当りません。もちろん守秘義務についても、納税者本人が了解しているのですから理由にはなりません。
 判例でもそのことは確認されています(東京地裁、昭和38(ワ)10917号)。不当な税務調査を防ぎ、納税者の権利を守るためにも、しっかりと国税局や税務署に物申すことのできる立会人が必要です。(ただし、税理士法第二条1項により、税理士以外の者が代理人として税務に関して主張することは認められません)

2. 事前通知のない税務調査に関する対応方法

 予告のない突然の税務調査は断ることができます。任意調査である以上当然のことであり、断るのに特別の理由など必要ではありません。予告なしの抜き打ち調査が常態化し、ともすれば強権的になりがちな、国税局資料調査課(リョウチョウ)による調査も、任意調査であることに変りありませんので、同様です。いったん帰ってもらいましょう。納税者と立会人の都合に合わせて、改めて調査日程を決めればいいでしょう。

3. 帳簿書類等を調査される場合の対応方法

 税務調査は申告した納税額についてのものですから、帳簿書類等を無制限に調べることはできません。
  1. 進行年度の帳簿書類とか証憑類は原則として見せる必要がありませんし、税務調査時点での現金などの調査(現況調査)は断ることができます。
  2. 税額計算に直接的な関係のない契約書等の重要書類や、機密文書など見せる必要はありません。とくに、法律によって守秘義務が課せられている医師、弁護士、公認会計士などの、患者とか顧客の個人情報については単に見せる必要がないだけではなく、見せてはいけないものです。ちなみに、税理士も税理士法の建前としては守秘義務が課せられている(税理士法38条、59条)のですが、一方、国税局や税務署に対しては顧客の相談内容などは洗いざらい開示することが義務付けられています(税理士法41条、55条)ので、こと税務当局に対しては守秘義務がないに等しいのです。大切な相談内容が国税局や税務署に筒抜けということです。

4. 帳簿書類等を勝手に捜索されそうになった場合の対応方法

 税務調査は任意調査ですので、納税者の了解なしで、勝手に事務所とか工場の中に入ったり、あるいは机の引き出しとか金庫を開けたりすることは許されていませんし、納税者の了解なしで、勝手に従業員に質問したりすることも許されていません。帳簿書類等の捜索は違法です。断りましょう。
 断ったにもかかわらず、帳簿書類等の捜索を強行された場合、納税者支援調整官制度や請願法を活用して、国税局や税務署に対して抗議することが可能です。

5. 反面調査に関する対応方法

 取引相手の税務調査に関連した調査(反面調査)に対しては、無条件に対応する必要はありません。最近、反面調査が当然のように濫用される傾向にありますので、まず、相手先に確認して了解を得、かつ反面調査の趣旨を確認してから対応するようにしましょう。税務署の言いなりになっていますと、場合によったら取引先からの信頼を大きく傷つけるおそれもありますので気を付けましょう。

6. 署名捺印を求められた場合の対応方法

 国税局や税務署の調査官が勝手に文書を作成して納税者に確認の署名と印鑑を求めることがあります。このような文書に署名したり捺印したりするのは納税者の義務ではありませんので、原則として断りましょう。やむを得ず署名捺印するときは、立会人によく相談した上でしましょう。調査官の機嫌を損じてはいけない、とか、あるいは、早く調査が終るなら、などと安易に考え、事実と異なる内容の文書に署名したりしますと、文書が一人歩きを始め、場合によったら取り返しのつかないことになるおそれがあります。
 国税局資料調査課(リョウチョウ)による税務調査(任意調査)において、質問てん末書(国税局査察部による査察において作成される供述調書)に似た文書を作成し、署名捺印を強要するケースがあるようですが、前述の通り、納税者の義務ではありません。信頼できる立会人とよく相談した上で、署名捺印をするか否かを判断しましょう。やむをえず署名捺印した場合にはコピーを残しておきましょう。

7. 税務調査の受忍義務に関する注意点

 税務調査がズルズルと長引いて、相当の期間を経過してもなお終了しないときには、調査理由の開示を求めましょう。これまで何を調査したのか、未調査のものには何があるのか、具体的に詳しく問い質すことです。その上で、税務調査を継続する合理的な理由が示されないときには、税務調査の中止を申し入れることです。納税者の受忍義務は無制限ではありません。
 嫌がらせのために調査を長引かせていることが明らかな場合には、公務員の非違行為として(インターネット等で)公表することも検討しましょう。公表を示唆するだけで、嫌がらせはぴたりと止まるはずです。
 また、納税者支援調整官制度や請願法を活用して、税務当局に対して抗議することも検討しましょう。

8. 調査事実の証拠保全に関する注意点

 税務調査の始めから終りまで記録しておきましょう。誰が来て、どのような質問をし、どのような税務調査をしたのか克明にメモをしておくことです。とくに、調査のときに調査官と取り交わした約束ごと、例えば問題がない訳ではないが今回は敢えて否認しない項目(是認項目)とか、重加算税の対象とするかどうか(重加対象項目)、あるいは今後の税務処理をどうするか(指導事項)などについては、明確な形で残しておく必要があります。税務署も他の役所と同様に、口約束が守られる世界ではないからです。
 文章にして担当調査官(統括調査官)のサインを求めればいいのですが、それができなければ、文章にしたものを担当調査官の面前で読み上げて、その読み上げた事実を「税務調査ノート」に記録しておくことです。約束ごとの書面化です。
 国税局や税務署の調査官の名刺は必ず受け取り、大切に保存しておきましょう。同時に、身分証明書・質問検査証の提示を求め、名前・登録No.等必要なことがらを記録しておきましょう。
 税務調査の状況を記録するには「税務調査ノート」が最適です。「被疑者ノート」(日本弁護士連合会)を参考に作成したもので、税務調査の状況を克明に記録することにより不当な税務調査を抑止する効果が期待できます。
 また、国税局や税務署はイヤがるようですが、録音、録画しておくといいでしょう。録音するなら税務調査をしないとか言って席を蹴って帰ることがありますが、気にすることはありません。不必要なトラブルを避けたいのであれば、隠しマイクでも使えばいいでしょう。
 公務の執行を、主人公である国民が記録するのに何のはばかりもありません。不当な税務調査を抑止するのに大きな効果を発揮します。最近の査察(マルサ)事案に関して、査察官の質問状況が全て録音されていたために、査察官が作成して法廷に証拠として提出された質問てん末書が、捏造されたものであることが明らかになったケースがあります。

9. 修正申告を求められた場合の注意点

 税務調査が一段落しますと、調査結果の一覧表(指摘事項一覧表)をもとに修正申告をするように勧められます。修正申告の慫慂(しょうよう)と言われているものです。納税者が修正申告に応じてくれることは、国税局や税務署としたら手間がかからずにそのまま調査官の実績となりますので、なんとか修正申告をさせようとします。
 指摘事項一覧表には、期毎の否認事項とその内容が記されているだけでなく、不正(仮装・隠ぺい)の有無が記されています。指摘事項一覧表が提示されたらまずそのコピーを求め、関与税理士と共に詳しい説明を求めましょう。指摘事項が十分に納得できるものであれば、修正申告に応じてもいいでしょうが、早く税務調査を終えたい、とか、調査官の機嫌を損じたらいけない、などと考えて安易に応じてはいけません。ひとたび修正申告したが最後、例えば国税局や税務署に騙されて修正をしたことが後になって判明した場合でも、異議申立てや審査請求をすることができなくなり、納税者を救済する道が完全に閉ざされてしまうのです。
 それだけではありません。不正(仮装・隠ぺい)認定処分が一定額以上の場合には、担当調査官の意向とは関係なく、査察部門に回付され、刑事事件に発展することがあります。6.の「文書が一人歩きを始める」ことと同様のことが起きかねません。とくに近年、仮装・隠ぺいに該当しないものまで不正認定がなされ、重加算税の賦課がなされている傾向がありますので、気をつけましょう。重加算税の賦課は、修正申告(あるいは更正)の後にされる処分ではありますが、修正申告に応ずる前に、重加算税の対象のもの(重加対象所得)をどのようにするか、予め担当調査官との話し合いを済ませておくことです。前述の通り、指導事項一覧表に明記されていますので、それをもとに話し合えばいいでしょう。
 話し合いがつかないか、あるいは話し合いをしたにも拘らず、後日重加算税の賦課決定処分がなされた場合には、ためらうことなく異議申立て(あるいは不服審査請求)を行ないましょう。金額の多少に拘らず、不正認定に対しては安易に妥協することは禁物です。近年、不正認定が乱発されていますので気を付けましょう。

10. 異議申立て(不服審査請求)の注意点

 修正申告の慫慂に応じて修正申告の道を選ぶのか、あるいは拒否をして更正の道を選ぶのかについての基本的な考え方は9.で述べた通りです。
 たしかに話し合いで決着がつけばそれに越したことはありません。しかし、ギリギリのところで交渉しているとどうしても話し合いがつかないことがあります。とりわけ、税務当局がゴマカシをしていたり、勘違いをしていたりしているような場合(このようなケースが非常に多い)には、話し合いがつかないことが多いでしょう。
 そのような時には、ためらうことはありません。根負けして、しなくともよい修正申告、更にはしてはいけない修正申告(とくに重加対象所得がある場合)に応ずることはせずに、更正の道を選び、異議の申立て、あるいは不服審査請求の可能性を残しておきましょう。
 税務当局に異をとなえることを嫌い、異議の申立て(不服審査請求)をなんとか避けようとしている税理士が多いのは事実です。納税者に修正申告をさせたとしても、自分のフトコロが傷むわけではありませんし、指摘事項に従ってさえいれば、税務当局との関係が一見良好であるかのような演出ができるからです。長年税理士業務をしている年輩の税理士の中には、一度も異議の申立てを行なったことがないことを自慢にしている税理士もいますし、極めつけは、納税者から異議の申立てを強く求められて、「どうしても異議の申立てをせよというのなら関与税理士を降りる」とまで言い出す税理士もいるほどです。
 たしかに、税理士事務所の経営の面からすれば異議の申立てを引き受けることは、手間ばかりかかってとても採算に合う仕事ではありませんし、どのように無茶な修正事項であろうとも、税務当局に従ってさえいれば一見スムーズにことは運ぶでしょう。しかし、このようなやり方は全て納税者の利益を無視したものであり、納税者の犠牲の上になされていることを忘れてはいけません。


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