トヨタ自動車が3,500億円の赤字に陥った場合の1年間の資金繰り(キャッシュフロー)について考えてみます。計算をするのに際して、次の4つの前提を置くことにいたします。
内容
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金額
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備考
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1.当期純損失
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△ 3,500億円
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2.減価償却費
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1兆4,000億円
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平成20年3月期は1兆4,900億円でしたが、平成21年3月期は新規投資が大幅に削られているようですので、少なくとも900億円は減少するものと仮定。
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3.現状維持の ための投資
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△ 4,800億円
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これは新規投資ではなく、現状を維持するために必要とされるもので、土地を除く有形固定資産の取得価額16兆1,300億円(平成20年3月31日現在)の3%と仮定。
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4.資産負債の増減
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0
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加味せず。
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以上の4つの前提のもとでは、1年の間で会社が自由にできるお金(フリー・キャッシュフローといいます)は次のようになります。
内容
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金額
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1.当期純損失
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△ 3,500億円
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2.減価償却費
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1兆4,000億円
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3.現状維持投資
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△ 4,800億円
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合計
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5,700億円
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つまり、トヨタ自動車は仮に最終損益が3,500億円もの大幅な赤字になったとしても、1兆4,000億円もの減価償却費(これはこの年において現金の支払いを伴わない経費で、最終損益の前の段階で差し引かれているものです)がありますので、5,700億円のお金がフリー(自由)な状態で残ることになります。
このように、フリー・キャッシュフローとして5,700億円が残るわけですが、会社はこの中から、
- 新規投資
- 配当金の支払い
- 自己株式の購入
- 借入金の返済、など
をすることになります。このうちの1.~3.については、必ずしもしなければならないものではありませんが、4.の借入金の返済だけはそうはいきません。借入をするのには金融機関と契約を結びますし、一定の金利を支払い、元金の返済についてもキチンと定められているからです。
トヨタ自動車の借入金の残高は次の通りです(平成20年3月31日現在)。
内容
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金額
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備考
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短 期 借 入 債 務
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1)借入金
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1兆2,260億円
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主として銀行借入。平均金利 年3.36%
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2)コマーシャル・ペーパー
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2兆3,260億円
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平均金利 年3.7%
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計
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3兆5,520億円
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長 期 借 入 債 務
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1)無担保の借入金
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1兆 160億円
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主として銀行借入。利率0.17%~28.00%。返済期限:平成20年~40年
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2)ミディアム・ターム・ノート
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5兆4,510億円
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連結子会社の発行。利率0.32%~15.25%。返済期限:平成20年~59年
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3)無担保普通社債
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1兆7,800億円
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連結子会社の発行。利率0.34%~14.00%。返済期限:平成20年~43年
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4)その他
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4,000億円
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計
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8兆6,570億円
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3兆5,520億円の短期借入債務のうち、1兆2,260億円の銀行借入は、銀行サイドの言葉として手貸(てがし。融資手形による貸付のことです)と言われるもので、特別な事情が起らない限り、通常は手形期日(返済期日のことです)を切り換えていくことができますし、コマーシャル・ペーパー(無担保の約束手形)については、2兆400億円の売掛債権が概ね対応していますので、返済については一応は手当てされていると考えていいでしょう。
しかし、8兆6,570億円の長期借入債務については事情が異なります。それぞれの借入金あるいは社債などに返済期日が定められているからです。
トヨタ自動車の契約にもとづく向う5年間の返済予定額は次の通りです。
3月31日に終了する各年度
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金額
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平成21年
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2兆6,754億円
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平成22年
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2兆3,054億円
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平成23年
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1兆1,444億円
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平成24年
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7,642億円
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平成25年
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6,151億円
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5年間の要返済額の合計
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7兆5,047億円
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いま、大赤字初年度である平成21年3月期を考えていますので、長期借入金の返済予定額は2兆6,700億円。これに対して、返済に充てることのできるお金(フリー・キャッシュフロー)は先に計算しましたように5,700億円しかありません。差引で2兆1,000億円不足します。
これをどうするか。会社の内部では工面できませんので、外部から調達するしかありません。仮にその全てを金融機関からの融資に頼るとすればどうでしょうか。
トヨタ自動車の、平成20年3月31日現在における未使用の借入金枠(金融機関が設定している融資限度額、つまり融資枠のことです)は次の通りです。
内容
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金額
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1.短期借入枠(未使用分)
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2兆6,292億円
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2.長期借入枠(未使用分)
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4兆8,901億円
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合計
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7兆5,194億円
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初年度の不足金2兆1,000億円は、取り敢えず上記の融資枠の範囲内ですからなんとかなるでしょう。
【参考】借入債務の四半期動向(※債務の総額は減っているが短期借入債務が大幅に増加している)
内容
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H20.03.31
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H20.06.30
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H20.09.30
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H20.12.31
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短期借入債務
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3兆5,520億円
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4兆3,570億円
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4兆2,880億円
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4兆4,670億円
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長期借入債務
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8兆6,570億円
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9兆0,910億円
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8兆5,090億円
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7兆3,940億円
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計
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12兆2,090億円
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13兆4,480億円
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12兆7,970億円
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11兆8,610億円
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しかし、仮にこの融資枠(借入枠)が今後も継続すると仮定しても、平成25年3月31日までに返済しなければならない借入金が7兆5,000億円ありますので、この時点で融資枠を全て使い切ってしまうことになります。
つまり、最長で平成25年3月31日までは金融機関からの借入れでなんとか凌(しの)ぐことができたとしても、それから先の資金手当てのメドが立たないということです。しかも、この時点での借入金の総額は19兆7,000億円(12兆2,000億円+7兆5,000億円)と、20兆円にも達することになります。
以上の考察は、この先遅くとも5年後に、資金繰り(キャッシュフロー)の面で破綻する可能性が極めて高いことを示しています。日経の記者氏の言うように、30年などとても考えることができないのです。
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ここで一句。
” 啓蟄(けいちつ)に 穴から出たら 暗闇だ” -宇都宮、松本重雄。
(毎日新聞、平成21年3月21日付、仲畑流万能川柳)
(政治も経済も。政界は 昼行燈に おかめひょっとこ。)